平成の日本経済が成長しなくなった理由 2
昔読んだ本、奇跡の経済教室から。
前回紹介した「個」としては正しい行動でも、「全体」として好ましくない事態になる現象、「合成の誤謬(ごびゅう)」。
この「合成の誤謬」を回避するために、企業や個人の行動を是正することが、政府の役割。
「個」である、企業や個人が合理的であるがゆえに、経済「全体」が好ましくない状態に向かう「合成の誤謬」、そしてこれを回避するために政府の「経済政策」が必要となる。
「デフレ」とは「合成の誤謬」の典型であり、民間に任せてしまっていては、デフレからは脱却できない。デフレ脱却は政府の責任でなされるべきである。
では、デフレ脱却のために政府は何をするべきか?
また、インフレになりすぎないように、経済政策で舵を取る必要がある。
【インフレ対策】
インフレとは「需要過剰&供給不足」であるから、需要を減らし供給を増やす必要がある。
需要を減らすために政府がすべきことは、消費と投資を減らすこと。
まず、政府自身の需要を減らすこと。具体的には、公務員などを減らし、小さな政府にすること。
また、民間の消費と投資を減らすため、課税し民間の支出を抑えること。
さらに金利を引き上げ、企業が銀行から融資を受けにくくし、投資を控えされること。消費者もローンを組みにくくなり消費は抑制される。
供給を増やすこともインフレ対策となる。つまりは、企業の生産性を向上させ競争力を強化させること。
そのためには市場での企業の競争を活発化させる必要があり、規制緩和や自由化によって、多くの企業が自由に競争に参加できるようにすることが有効。また、国は事業を民営化し、市場での競争を効率化させ生産性を向上させるのも有効。規制緩和はグローバルで行えば、競争は激化し生産性はさらに向上する。(グローバル化は供給力を強化させるインフレ対策)
【デフレ対策】
デフレは「需要不足&供給過剰」なので、インフレとは逆。対策も反対したものになる。
まず、政府は自身の需要を増やさねばならない。社会保障費や公共投資を拡大し財政支出を拡大、公務員の数を増やすなど、大きな政府にする。
また民間の消費や投資を増大させる必要があり、これには減税が効果的。
政府が財政支出を増やし税収を減らすことは財政赤字を拡大すること。
財政の健全化が需要を抑制するインフレ対策であれば、反対の財政赤字の拡大はデフレ対策ということ位なる。
デフレは供給過剰なので、供給を抑制することもデフレ対策としては有効。
デフレの時には、企業の生産性が向上すると、さらに供給過剰となってしまうので、企業の競争は抑制気味にするべき。具体的には規制緩和や自由化はせずに、規制強化、事業保護で多くの企業が市場に参入できないようにし、競争を抑えるべき。民営化も競争を激化させるので、公益的な事業や倒産により対象に失業者がでるものは、しないほうがよい。
競争を抑制すべきなので、ヒト・モノ・カネが自由に国際的な移動をするグローバル化は制限した方がよい。保護主義は、実は、供給過剰を抑えるデフレ対策の一つ。
平成不況の原因は、デフレ不況から脱しようとして、反対のインフレ対策である「構造改革」を行ってしまったから。
平成で日本で提案された改革は、「小さな政府」「財政再建」「グローバル化」と、いずれもインフレ対策であった。
デフレ下におけるインフレ対策という誤った政策が、デフレの長期化を招き、経済成長もしなくなった、平成の日本経済が成長しなくなった理由である。
<インフレ対策とデフレ対策の違い>
【インフレ】 【デフレ】
■状態 ■状態
需要>供給 需要<供給
■対策 ■対策
需要抑制、供給拡大 需要拡大、供給抑制
■政策目標 ■政策目標
物価安定、賃金抑制 雇用の確保、賃金上昇
■政策(需要対策) ■政策(需要対策)
小さな政府 大きな政府
緊縮財政 積極財政
増税 減税
金融引き締め 金融緩和
■政策(供給対策) ■政策(供給対策)
競争促進、生産性向上 競争抑制